PC-8001は後継機mkUがデビューするまでの約3年の間に25万台が出荷されたということです。 現在のようにパソコンが普及していなかった当時としては記録的な数字です。(その後、NECの独走はPC98シリーズ終焉までの20年に渡り続きました)
PC-8001がデビューした当時のライバルのマシンを見てみるとSEIKO-5700(精工舎)、MZ-80K(シャープ)、BASIC MASTER L1(日立)と既に実力派が揃っています。
さらに海外ではApple II(Apple)、PET-2001(コモドール)、TRS-80(Radio Shack)など性能ではPC-8001にも劣らないマシンが既に発売されていました。
ではPC-8001の人気の秘密はどこにあったのでしょう?
まずは性能
CPUにZ80(3.9936MHz)、ROM24KB(最大32KB)、RAM16KB(最大32KB)と当時の基本はしっかり抑えています。
優れていたのは表示能力で、80×25文字のカラー表示(8色)が出来ました。今では携帯電話でもカラーが当たり前ですが、当時の国産マシンでカラー表示を標準装備したのは驚きでした。
さらに、160×100ドットと解像度は低かったもののグラフィック表示(セミグラフィック)が可能でした。ドットごとに色が指定出来ないなど制限もありましたがこのグラフィック機能はPC-8001にとって追い風となりました。
なぜなら同年4月にデビューしたインベーダーゲームが大ブームになっていてこれを移植するのにちょうどよい表示能力だったからです。
PC-8001の表示機能は新規開発されたLSIμPD3301Dによってコントロールされていました、多くのLSIがアメリカで開発されたいたなかでμPD3301DはNECのオリジナルでした、LSI化はコストダウンにも繋がっています。
PC-8001が成功した理由にはこのLSIの存在もあるかもしれません。(μPD3301DはPC-8801シリーズにも継承されています)
次に価格
国内のライバルマシンが20万前後の価格設定をしているなかで本体標準価格、168,000円と安く設定されていました。性能を考えるとかなりのお手頃価格だったと思います。(海外マシンの価格はPC-8001の数倍はしました)
そしてソフトウェア
この時代のコンピュータはBASIC言語を使って操作することが標準となりつつありましたが、このBASICを国内メーカーは各社独自に開発していました。
現在、Windowsを販売しているMicrosoft社は元々はこのBASICを開発する会社だったのですが。PC-8001は国内のパソコでは初めてMicrosoft社のBASICを搭載しました。
当時、NEC(マイクロコンピュータ販売部)でも独自のBASICを開発していてMicrosoft社のBASICと比較しても劣るものではなかったということですが、ブランドイメージを利用した戦略としてMicrosoft社のBASICが採用されました。(技術よりブランドイメージが先行するのは現在とあまり変らない?)
結局PC-8001以降、多くのパソコンメーカがMicrosoft社のBASICを標準搭載するようになります。(ちなみにMicrosoft社の日本代理店はアスキーが行っていました)
最後に拡張性。
PC-8001はホビーユーザーから大きな支持を得ましたが、実務にも耐えるビジネス向けに設計されたマシンだったと思います。
そのため家庭用のテレビにはアダプターを使用しないと接続出来ず、専用のカラーディスプレイに接続(デジタルRGB)した場合に高精度な表示が可能になります。
さらにデュアルミニディスクユニット(現在のフロッピーディスクと同じ仕組み)を拡張することで合わせて320KBと当時としては大容量のデータを扱う事も可能でした。
拡張機器は本体と比べても高額でしたが、システムで活用することでホビー以外の分野にもPC-8001は浸透していきました。
PC-8044 家庭用TV カラーアダプター (13,500円)
PC-8042 カラーディスプレイ (109,000円)
PC-8043 高解像度カラーディスプレイ (219,000円)
PC-8031 デュアルミニディスクユニット (310,000円)
PC-8033 FDD I/O ポート (17,000)
PC-8011 拡張ユニット (148,000円)
PC-8012 拡張I/Oユニット (84,000円)
実際には本体とPC-8044を購入してカセットテープを記憶媒体にしてがんばっていたユーザーが大多数だったと思いますが...
現在、PC-8001の発売日を記念して9月28日がパソコンの日になっているそうです。PC-8001が日本初のパソコンではないのですが、パソコンブームの主役として記念されているのだと思います。(誰が決めたのか不明)
PC-8001の開発を行ったのはTK-80と同じNECマイクロコンピュータ販売部です。
マイクロコンピュータ販売部はNECの電子デバイス事業部のひとつの部署であって当時のNEC社内ではあまり認知されていないセクションでした。PC-8001はパソコンの将来を確信していたマイクロコンピュータ販売部のメンバーがなかば強引にデビューさせたマシンです。(ProjectXでは定番ですが企業の枠を超えたときに成功があるんですね)
おまけ
時の流れを感じる、マニュアルの表紙がここにあります、かなり渋いです。
ユーザーズマニュアル、リファレンスマニュアル
11/10/07 このページ更新するのは15年ぶりぐらい…
半導体シニア協会ニューズレター Encore(アンコール) 2006年4月 NO.45 (PDF) デバイス屋が創ったNECのパーソナルコンピュータ「PC-8001」 にてPC-8001開発当時の状況が語られています。是非ご一読を。
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