バッテリーケース内蔵ACアダプタ
|
PowerBook500シリーズのACアダプターは重くて大きいので持ち運びには不便です、でもバッテリーの持続時間が最高でも5時間程度なのでACアダプターを持ち歩く機会は多いと思います。
そこで、持ち運びに便利なバッテリーケース内蔵のACアダプタを作成してみました。
本当は本体への改造なしでACアダプタを実現したかったのですがEMMシステムが意外に頑固だったので騙すことが出来ずロジックボード上にコネクターを新設することで対処しました、(バッテリーも使用できます)
完成したACアダプタはとても軽くて便利なので、みなさんがんばってチャレンジして下さい。
|
Step1 材料の調達
1.
|
いらないバッテリー
|
|
ケースしか使わないので、まったく認識されないバッテリーが適任です。
説明に使っているバッテリーはシリアルにBSxxxと書かれていたものですが、他にBPxxx系が存在します、こちらは構造が異なり加工にも若干不向きのようです。
もしBPxxx系で説明が異なっている箇所があった場合はご了承下さい。
|
2.
|
スイッチングレギュレータ
|
|
今回使用しているのはデンセイ・ラムダのVS10B-12です、秋葉原の千石電商で1310円で購入しました。出力は12V0.85Aとちょっとパワー不足ですが、入手のしやすさを考えるとこれだけベストサイズのものは他にないと思います。
|
3.
|
特殊端子
|
|
バッテリーケースからのプラス側の出力を直接ロジックボードに入力するための端子です。ジャンクのロジックボードから取り出したものを加工するのが簡単ですが銅板を使った簡単な工作でも作成できると思います。
|
4.
|
銅板
|
|
ロジックボード上に新設した端子にスイッチングレギュレータからの出力を供給するために使います、厚さ0.2mm程度の銅板が最適です。
|
5.
|
リード線
|
|
スイッチングレギュレータと端子の間を繋ぎます、1A以上の電流がながれるので十分に容量のあるものを選んで下さい、また赤や黒など違う色を用意にすれば極性をまちがえにくくなります。
|
6.
|
ダイオード
|
|
電源未供給状態でのロジックボードからACアダプタへの逆流を防止するためと回路保護のために使用します。ショットキ バリアで40V1.5Aあたりがお勧めです、容量に注意して購入して下さい。
|
7.
|
100V用小型コネクター(ペア)
|
|
ACアダプタを本体にセットしたままバッグに入れることを考えて電源ケーブルを着脱可能にするために使っています。本当はプレイステーションの電源ケーブルと同規格のコネクターにしたかったのですがスペースの関係で無理だったので千石電商で見つけた小型コネクターを使いました。スイッチングレギュレータから直接電源ケーブルを出す場合には必要ありません。
※小型コネクターを使うときはスイッチングレギュレータ基板上の100Vのコネクターに干渉するので基板上のコネクターは取り外して下さい。
|
8.
|
エポキシ系接着剤
|
|
100V用コネクターとファンを固定するのに使います、チューブ状のAとBに分かれたエポキシ接着剤が便利です、位置決めも微妙なので硬化時間が5分位のものがいいです。
|
9.
|
小型ファン
|
|
550Cや改造した5xxなど電源に対する負荷が高いマシンを駆動する場合スイッチングレギュレータはかなり発熱します、このとき真上の内蔵電池への影響も心配です。
これを解消するためにファンを内蔵します、スペースがないので2cm×2cmのファンしか使えません、動作電圧が12Vのプラスチックパッケージのファンを選んで下さい。
※ファンを後から追加することも出来ます。
|
10.
|
半固定抵抗
|
|
ファンをフルパワーで駆動するとうるさいので、50KΩ程度の半固定抵抗を使ってパワーを調整します。
|
11.
|
アルミ板
|
|
ファンを内蔵した場合の空気の吸入口を確保するためにバッテリーケース上側のシールが貼ってある部分を適度に穴の空いているアルミの板にします。
※バッテリーケースに直接穴を空けても同様の効果を得られます。
|
Step2 バッテリーの分解
バッテリーを二枚におろします。カッターとマイナスドライバーなどを隙間に入れて割るような感じで作業していくのですが接着剤でしっかりくっ付いているので手強いです。
今回はケースの再利用なので、中身のことは気にせずに作業します。ただし端子の部分は使うので、この部分のフラットケーブルには注意しながら端子部を分離して下さい。
※怪我には十分注意して下さい。
|
Step3 バッテリーケースの加工
解体に成功したら、スイッチングレギュレータを入れるためのスペースを確保するために内部を削ります
削る部分は写真の番号にあわせて説明します。

1.
|
左右と同じ高さになるまで削ります、穴があきますが気にしないで下さい。
|
2.
|
1と同じ高さになるまで削ります
|
3.
|
銅板をセットするための幅5mm程の穴を空けます、写真では見えませんが図を参考にして二個所空けます。
※後で銅板をセットした際にガイド用の溝の部分と干渉しないように穴を空けて下さい。
|
4.
|
電源ケーブル用のコネクターを取り付ける場合に穴を空けます上下二枚とも同じように削ります。コネクターと合わせながら少しずつ削って下さい。
※ファンを取り付ける場合は位置に注意して下さい。
|
5.
|
ファンを取り付る場合に穴を空けます、ファンはケースよりも厚みがあるので大きく削ります、現物と確認しながら上下二枚とも同じように削っていきます。
|
6.
|
1と同じです。
|
7.
|
スイッチングレギュレータの部品が当たるので、突起を削って平らにします。
|
8.
|
4と同じです。
|
9.
|
5と同じです。
|
10.
|
吸入用の穴空きアルミ板を取りつける穴を空けます、シール部分にあわせて表側から空けます。アルミ板も切り取った部分にあわせてカットし、エポキシ接着剤で固定します。
アルミ板を使用しない場合はこの部分に等間隔で穴を空けて下さい。
※写真では、シール部分の半分程度をカットしていますが、ファンのパワーを強くすればシール部分全体を空けたほうが冷却効果は高くなります。
|
|
Step4 バッテリーケースへのセット
全て削ることが出来たら、写真を参考にして簡単にくみ上げてみて下さい。
スイッチングレギュレータがきちんと収まらないときは、ハンダ面に飛び出している部品の足をニッパーで短く切ります。
全ての部品がケースと干渉する部分がないことが確認できたら接着します。接着は下側のケースのみに行います。
スイッチングレギュレータは後のメンテナンスを考慮して接着しません。もしグラグラするようならテープで固定します。
ファンなしの写真はこちら
|
Step5 サイドカバーの加工
加工したバッテリーケースにあわせて、バッテリーサイドカバーの加工を行います。写真を参考にして現物とあわせて削っていって下さい。
※ドリルやハンダごてなどで穴を空けてからカッター等で削れば、意外と簡単に加工出来ます。
|
Step6 スイッチングレギュレータとの接続
1.
|
コネクターの作成
|
|
デンセイ・ラムダのVS10B-12にはコネクターも付属しているので、コネクターに導線をハンダします。
|
2.
|
DC側マイナスの接続
|
|
マイナス側はバッテリー端子のマイナスと繋ぎます。バッテリー端子はマイナス部分のみ1cm程度残して後は切りますそして表面をはがしてから導線をハンダします。
※BPxxx系のバッテリーケースでは、端子部分をケースから分離できません。
|
3.
|
DC側プラスの接続
|
|
プラス側は、ケース加工で空けた穴に図を参考に5mm幅の銅板をつけて端子を作り、そこに導線をハンダします。このときダイオードを導線の間に挟んで下さい。ダイオードの方向はリングマークがあるほうを作った端子側にします。
※銅板へのハンダはあまり熱を加えるとケースが変形してしまうのでできるだけすばやく行って下さい。
|
4.
|
AC側の接続
|
|
AC側に直接電源ケーブル繋ぐ場合は付属してきたコネクターに電源ケーブルをハンダします。小型コネクター経由に繋ぐときは基板に直接、導線をはんだします小型コネクターの端子が部品と干渉するときは端子を短く切ります。メス側の小型コネクターには電源ケーブルをハンダします
※ショートしないように十分注意して下さい。
|
5.
|
ファンの接続
|
|
プラス側はスイッチングレギュレータのプラス側からダイオードまでの間に、マイナス側はバッテリー端子のマイナス部分に繋ぎます。半固定抵抗はファンのプラス側の導線を途中で切って間に入れます。
|
|
Step7 テスト
コンセントに繋いで動作テストを行います、異常発熱やスパークがなければまず問題ないでしょう。テスターを持っていれば極性の確認と電圧の調整を行います。
デンセイ・ラムダのVS10B-12は基板上の半固定抵抗によって最大15V程度まで出力電圧を調整可能です。
テストに異常がなければ、ケースを組み上げます、ケースは接着しなくても強度があるのでヒューズ交換などのメンテナンスを考えて接着しません。
※テスターを持っていない場合
市販の12Vのスイッチングレギュレータは出荷時の状態で出力電圧が12Vに設定されています。必要な電圧は10V以上なのでダイオードによる電圧降下を考慮しても10V以上の電圧は確保されるのでとくに調整しなくても問題はありません。
|
Step8 ロジックボードの加工
ロジックボードに製作したアダプターからのからの出力を入力する端子を新設します。
写真ではジャンクのロジックボードから取り出したバッテリーの端子を流用しています、バッテリーの端子側から見て右側のマイナスの端子の部分が接着面が平らで加工がしやすいです。
この端子を入手できない場合は同じようなものを新たに作らなければなりません、ゴムやアクリルと銅板を使って、ロジックボードのバッテリー端子を参考にして作って下さい、目に付くところではないので強度と絶縁を重視します。
接着にはエポキシ接着剤を使います、位置は写真を参考にして下さい。
導線はロジックボード上のQ5のIC、5〜8ピンと接続します。
|
Step9 動作確認
全ての加工が終了したら、万が一の場合に備えてPowerBookをノーマルに近い状態に戻してから
動作チェックを行います。
取り敢えず起動できればOK!です、後はCPUに負荷を掛けるなど連続テストを行ってアダプターの発熱をチェックします。パームレストが熱くなってくるようだと放熱に問題があります。
ファンがあるなら、静粛性を犠牲にしてファンのパワーアップを行いファンがなければファンの追加を検討して下さい。
それでは、軽くなったACアダプタと一緒に、思いっきり5xxを連れまわして下さい。
作成レポートなどもお待ちしております。
|
* 問題点 *
5xxシリーズの内蔵電池は、ACアダプター未接続で左右のバッテリースロットのどちらにもバッテリーが入っていない状態では、約2日ほどで電圧が降下してPRAMとリアルタイムクロックの保持ができなくなるようです。
このため、左側にPCMCIAモジュール、右側にACアダプタをセットした状態では長時間放置出来ません。
バッテリーケース内蔵ACアダプタからでも、内蔵電池に充電されることは確認しましたが充放電の繰り返しは内蔵電池にとってあまりよくないので未使用時にはどちらかのバッテリースロットにバッテリーを入れるようにして下さい。
|