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8Bit時代パソコン | SHARP

mz-80

1979年10月に発売された、シャープ初の完成パソコンがMZ-80Cです。 キーボードとディスプレイが合体している一体型のマシンです。 ケースはすべて金属製なので無骨なイメージがあります。 (赤のディスプレイカバーがアクセントになってかわいい印象もある?)

MZ-80C以前の1978年12月に同じ性能のMZ-80Kが発売されています、 MZ-80Kはセミキットだったので完成品ではMZ-80Cが最初です。
セミキットといっても、現在の自作パソコンみたいに作るのは簡単ではなくハンダづけも必要です。
MZ-80Kは部品事業部が開発したので、完成品として出荷できずセミキットになったのが真相のようです。
以降、MZ-80Kとして説明します。

 
ハードウエアをみるとCPUに8BitのZ80を採用、クロックは2MHz、RAMは20Kバイト(MZ-80Cは48Kバイト)、ROMは4Kバイトと今となっては想像も出来ない様な貧弱な構成です。
これじゃなにも出来ないと思ってしまいますが、熱意(MZへの愛情)あるユーザーが自分で作ったゲームを雑誌で公開したりしていたのでソフトも充実していて、いろんなことが出来て結構遊べたんです。
 
1979年9月にPC-8001がデビューした後はMZユーザーとPCユーザーの2大派閥が形成されてお互いのマシンにライバル意識を燃やします。この緊張関係のもと、数々の名作ゲームが雑誌に投稿されました。(いい時代でした)
 
MZシリーズの最大の特徴はクリーンコンピュータと呼ばれる機構を採用していたことです。当時はフロッピーディスクやハードディスクなどは超高級だったので現在のパソコンのように標準装備されていませんでした。
そのため、基本ソフトとなるBASIC(現在のOSの部分の役割も持つ)はコンピュータ本体(ROM)に組み込んで製品にするのが普通でした。(現在のパソコンで考えるとマザーボードにWindowsが入っているイメージです)
バージョンアップをするためにはROMを交換する以外に方法はなく、事実上不可能でした。ところがMZシリーズは基本ソフト(主にBASIC)をテープ(ディスク)で供給することで現在のパソコンと同じようにシステムを入れ替えることが出来ました。
 
実際にはBASICをSHARP社内でプログラムしていたために、バグによるトラブルでROM交換をする羽目になることを恐れてクリーンコンピュータとしてBASICを別供給にした一面もあったようです。
 
ただし、クリーンコンピュータは電源を入れるたびに基本ソフトを読み込む必要があります、 当時はテープレコーダが外部記憶装置として一般的だったので、 毎回数分のロード時間が必要になりクリーンコンピュータの欠点にもなります。
このためMZ-80Kは一体型ボディに信頼性の高いテープレコーダを搭載し当時のレベルでは高速なスピード(1200BPS)でアクセス可能になっていました。
左の写真がMZ-80Kの拡張構成です、フロッピーディスクドライブを接続するためには、 拡張I/Oボックス MZ-80I/O、フロッピーディスクインターフェース MZ-80FIOが必要になります。 写真のフロッピーディスクドライブ MZ-80SFD はシングルドライブで容量は143Kバイト、 価格は158,000円と当時のユーザーからすれば高嶺の花でした。(写真の機器はだいぶ安くなってから入手しました)
本体の上に乗っかっているのが、HAL研究所のプログラマブルキャラクタージェネレータ PCG8000、 セミグラフィック機能しか存在しないMZ-80KにPCG8000を接続することで、 128文字分のオリジナルキャラクタ文字を、ドット単位で作成して使用することが出来ます。

ハードウェアの変更をするには、手前からガバッと開けて、ストッパーでロックします。(車みたいでかっこいい)
 
当時のセールスポイント
シャープは、パーソナルコンピューターの世界に新しい思想を導入しました。特定の言語をROMに固定する従来の方式をとらず、メモリーの大部分をRAMで構成。可能な限りの自由な領域を作り出し、目的に合わせた各種言語の入れ替えが可能という、コンピューター本来のあるべき姿を実現しました。
(うーん、メモリーを大量消費する現在のOSに聞かせてあげたい)

当時のライバルPC-8001との比較
 MZ-80K/C PC-8001
CPU Z80(2MHz)
倍速改造可能
 Z80A(3.9936MHz)
RAM 20Kバイト
(MZ-80Cは48Kバイト)
 16Kバイト
(最大32Kバイト)
ROM 4Kバイト(モニタ)
2Kバイト(キャラクタ)
 24K(BASIC)
(最大32Kバイト)
Text 40文字×25行(モノクロ) 最大80文字×25行
(制限付き8色)
Graphic 疑似グラフィック 80×50
(モノクロ)
 セミグラフィック 160×100
(カラー8色、キャラクター単位)
Casset カセットデッキ搭載
(1200BPS)
 インターフェイス内蔵
(600BPS)
Display 10インチ白黒モニタ内蔵
(MZ-80Cはグリーンモニタ)
 外部接続 デジタルRGB
Date 時計機能あり 専用時計IC実装
(μPD1990)
Sound 3オクターブ単音
(タイマーIC、8253使用)
 Beep
(周波数固定ブザー音)
BASIC シャープオリジナル
SP-50xx
 Microsoft製
N-BASIC Ver 1.0
Prize 198,000円
(MZ-80Cは278,000円)
 168,000円

CPUは両者同じZ80を採用しています、クロックはPC-8001がMZ-80Kの2倍の約4MHzですがMZ-80Kには倍速改造キットがサードパーティーから販売されていたのでこれを装着すれば同等になります、クロックアップのはしりですね。
 
PC-8001は表示機能を管理するμPD3301D(CRTC)がDMA転送を行っていたためCPUパワーの30%程度を使っていました。そのためDMAを停止しない限りは2.8MHz相当のスピードしか出すことが出来ません。(PC-8801でも同じです)
これに比べMZ-80Kの回路はシンプルそのものなのでCPUパワーをほとんどそのまま使えます、ただし表示にノイズ(ちらつき)がでるなどの欠点もありました。(V-BLANKを監視すればソフトウェアで一応対処可能)

 
採用しているBASICはPC-8001がMicorosft開発の高機能なN-BASIC、MZ-80Kが社内開発のシンプルで高速なBASIC(SP-50xx)と性格が異なります、MZシリーズには後にハドソンソフトからHu-BASICも登場します。
MZ-80Kは他言語もすぐに利用できたので、この点ではクリーンコンピュータのMZが有利です。
 
サウンドに関してはMZ-80Kが専用のハードウェアによって3オクターブの音が出せるのに対してPC-8001はピーッと鳴るブザーのON/OFFが出来るだけです。(ブザーのON/OFFを高速で行うことで効果音も出していましたが、無理があります)
 
さらにPC-8001には内蔵のリレーを高速動作させて音を出す荒業もありましたが...
 
結局、MZ-80Kは後発のPC-8001には性能では負けていましたがそのシンプルな設計思想とマイコン時代の良い雰囲気を持っていたことでホビーユーザーの支持を得ていたんだと思います。
他のマシンが次々と機能強化していくなかで1982年5月発売のMZ-1200まで基本設計を変えずにいたことも結果的には良かったのでしょう
名著といわれている オレンジ色のBASIC解説書にも書いてあるようにMZ-80Kは夢を運ぶ船としてユーザーに夢を与えたことは間違いないでしょう。
 
マシンの名前の前にある赤いマークが勇気、未来、探求、そして憧れといったものをあらわす帆船、アルゴ船のマークです。