PC-9801(1982年10月13日発表)は、後に国民機とまで呼ばれたPC-98シリーズ初代のマシンです。(価格は298,000円)
Time Machineでは、8Bitのマシンを中心に紹介しているのですが、
PC-9801はCPUにインテルi8086(μPD8086コンパチブル)を採用した16Bitマシンです。
現在では一般で使われるコンピュータのことをパソコン(パーソナルコンピュータ)と呼んでいますが、 パソコンと呼ばれる前はマイコン(マイクロコンピュータ)と呼ばれていました。 マイコンと呼んでいた時代のコンピュータはコンピュータに詳しくないと、 使うことが難しく、使えるようになる為にはハードルが高いものでした。 コンピュータがパソコンと呼ばれるようになってから徐々に誰でも簡単に使えるようになってゆき、 今ではインターネットの普及とあわせて多くの人がパソコンを簡単に使えるようになっています。 PC-9801シリーズは、本当の意味でのパーソナルコンピュータとして様々な場所に浸透していった日本で最初のパソコンだったと思います。 Windows95が発売され、IBMの規格から派生した世界標準のパソコンが日本でも主流になるまでの間、 日本独自規格のPC-98シリーズの繁栄は15年程続きました。 ハードウェアの構成を見ると、インテルの8086ファミリーを中心とした回路構成で、 IBM PC(1981年8月12日発売)と基本部分は似ています。 しかし、PC-9801は日本独自の漢字に対応しなければならなかったことと、 既に成功を収めていた、PC-8801の資産を受け継がなければならなかったことがあり、 その両方を巧みに実現しています。 CPUはi8086(μPD8086) 5MHz、RAM 128KB(最大640KB)、VRAM 96KB、ROM 96KB、 割込コントローラはi8259Aをカスケード接続し割込み本数を確保。 DMAコントローラはi8237を採用しディスクなどからのデータ転送の高速化に役立てています。 漢字の表示についてはNECで開発していたグラフィック・ディスプレイ・コントローラ(GDC)μPD7220を採用し高速表示に対応します、 この手法はPC-8001がμPD3301Dを採用したパターンに似ています。 さらに、グラフィック画面の表示用にもμPD7220を搭載し640×400ドット8色表示を実現しています。 初代PC-9801のVRAMは96KBでした、これはPC-8801の2倍の容量となります。 グラフィック画面とGDCは進化を続け、 PC-9801VF/Uから搭載されたGRCG(Graphic Charger) では 640×400ドット16色(4096色中)の2画面表示が可能となり、 PC-9801VX/UXから搭載されたEGC(Enhanced Graphic Charger)ではさらに描画速度が向上しました。 PC-8801からの資産の継承については、BASICと周辺機器を中心に進められ、 PC-8801のN88-BASICの互換性を最大限に実現したN88-BASIC(86)を自社で開発し本体のROMに搭載しました、 CPUおよびアーキテクチャが異なるためバイナリレベルでの互換性はありませんが、 当時のゲーム以外の実用プログラムはBASICで記述されることが多かったため、 高い移植率を実現しました。 マシンのデザインもPC-8801に似ていますが、サイズは2回りほど大きくなっています。 PC-9801にはMS-DOSで使用するイメージがあると思いますが、初代のPC-9801は標準の状態でディスクドライブは実装されていないため起動するとN88-BASIC(86)が立ち上がりました。 ROMの容量は96KBです、初代PC-9801では漢字ROMはオプション(40,000円)で未搭載です。 機能拡張はPC-9801専用のスロットに拡張ボードを刺すことによって可能です。 スロットの規格はCバスと呼ばれ、バス幅は16ビットです(後に拡張)、 サードパーティから様々な拡張ボードが発売され、PC-9801の活躍の場を広げました。 これだけ高機能で、贅沢とも言える仕様だった初代PC-9801だったのですが サウンド機能が残念ながらビープ音のみです。 音源ボードPC-9801-26(1985年1月発表)の拡張により、サウンド機能も充実します。 |
上の写真はPC-9801のリアビュー、写真で見ると大きく感じませんが、実際はとても大きいです。 Cバスの拡張スロットは6つもあります、フロッピーディスクを接続するためのコネクターは 5インチ用と8インチ用が別々にあります、左上の緑色のコネクターは8インチフロッピーディスクドライブへの電源供給用です。 |
初代PC-9801のROMは、上の写真の拡張ボードに収められています、ここにN88-BASIC(86)とITF(BIOS)が収められています。
これは、開発期間が短かったので、バグを取りきれていない可能性があるため、後で交換し易いようにとの事から取られた処置のようです。
ROMボードが収められたスロットはRスロットと書かれていて、取り外しは厳禁です。
PC-9801はPC-8801、PC-8801を生み出したNECマイクロコンピュータ販売部ではなく、 個人向けではなかったオフコンを扱う情報処理グループが開発を担当し、 さらに、開発期間は1982年4月から1982年9月までの僅かな期間だったそうです。 そして、PC-9801は21世紀になった現在でも未だにしぶとく活躍しています、 研究機関やお役所、JRなどで、元気に動いているマシンも見かけます、 2006年末までは、保守用のPC-98互換機が発売されていました。 まだまだ、中古で保守部品を扱う店も存在します。 懐かしいピポッ!という音が完全に聞こえなくなるのは、 まだまだ先のことなのかもしれません。 |